認知症でリモコンの操作がわからなくなる理由と、試したい4つの対処法

認知症の親がリモコン操作を忘れてしまう理由と、試せる対処法
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「今まで普通に使えていたテレビのリモコンが、急に使えなくなった」というのは、認知症介護の現場でよく聞く困りごとです。この記事では、なぜリモコン操作が難しくなるのか、専門機関の情報や研究をもとに整理し、試せる対処法をまとめます。

※本記事は公式機関・研究情報をもとに作成しており、筆者自身の家族の実体験に基づくものではありません。認知症の症状や進行は人によって大きく異なります。診断や具体的な対応については、かかりつけ医や地域包括支援センターなど専門機関にご相談ください。

目次

なぜリモコン操作が難しくなるのか(失行だけではない複数の要因)

リモコン操作が難しくなる背景には、複数の要因が関わっているとされています。

「失行」という症状

認知症の症状の一つに「失行」があります。これは、体は動かせるのに、それまで普通にできていた動作の手順がうまくできなくなる症状です。長年使ってきた家電の操作が、ある時期からできなくなることがあるのは、この失行が関係している場合があるとされています。可知記念病院の解説

失行だけではない、他の要因

ただし、リモコン操作の難しさを「失行」だけで説明できるわけではありません。記憶力・判断力・注意力といった認知機能全般の低下や、視力・聴力の低下がボタンの視認性や音の聞き取りに影響することも、操作の難しさにつながるとされています。

研究紹介

京都府立医科大学の近藤正樹氏らによる研究「アルツハイマー型認知症における日用物品使用調査と『リモコン使用課題』の検討」(神経心理学 2018年)では、外来通院中のアルツハイマー型認知症患者を対象に、テレビなどの家電の使用状況とリモコン操作課題を調査しています。

調査では「使えない」と回答された家電製品を多い順に並べると、テレビのリモコンが最も多く28.1%(32名中9名)、次いで電話21.9%、扇風機18.8%、エアコン15.6%、電子レンジ9.4%という結果でした。家庭にある家電の中でも、テレビのリモコンが最も「使えなくなった」と感じられやすい製品だったことがわかります。

また、リモコン操作課題そのものでは、対象者の4分の1程度で誤反応が確認されました。一方で、ボタンを押す動作自体は可能であり、認知機能検査(MMSE)の結果との相関も見られたことから、研究では「認知症の重症度に関わる失行以外の要因が関与している可能性」が示唆されています。

出典:近藤正樹, 手塚陽子, 水野敏樹「アルツハイマー型認知症における日用物品使用調査と『リモコン使用課題』の検討」神経心理学 34巻1号(2018年)74-82頁

つまり、「リモコンが使えなくなった=失行が進んだ」と単純に決めつけず、視力・聴力の低下や、リモコン自体の複雑さ(ボタンの数が多い、表示が小さい等)も含めて考えることが大切だとわかります。

試せる対処法

公的機関や支援団体が紹介している対処法には、以下のようなものがあります。テレビが高機能化してボタンが増えたことも、操作を難しくしている一因とされているため、まずは「シンプルにする」方向の工夫から検討されています。国立障害者リハビリテーションセンターの支援マニュアル

  • 使うボタンを限定する:普段使うボタン(電源、チャンネル等)だけが目立つように、色付きのテープやシールでマークする
  • 簡易リモコンに変える:ボタンの数が少なく、軽いリモコンに変更する。ただし、使い慣れたものから変更すると、逆に混乱するケースも報告されています
  • 貼り紙やメモを活用する:操作手順を大きな文字で書いたメモをリモコン本体や近くに貼る
  • 本体側の操作で済ませる:リモコンを使わず、テレビ本体のボタンで電源だけ入れられるようにしておく

注意点として、支援団体の解説では「すべてを家族が代わりに操作してしまうと、本人の機能低下がより進んでしまう可能性がある」ことも指摘されています。可能な範囲で本人が自分で操作できるよう、工夫の形で支援することが望ましいとされています。可知記念病院の解説

具体的な簡易リモコンの工夫

介護用品として発売されている簡易リモコンには、いくつかの共通した工夫が見られます。パナソニックが介護用品として展開していた「レッツ・リモコン」(現在は生産終了)は、指先以外(こぶし・親指)でも押せる大型ボタンを採用し、赤外線の発信部を複数箇所に設けることで、リモコンを構える姿勢を気にせず操作できるよう設計されていました。パナソニックエイジフリーの解説

現在販売されている代替リモコンでも、次のような工夫を持つ製品が紹介されています。

  • ボタン無効機能:特定のボタンを同時押しすることで、使わないボタンを反応しないよう設定できる
  • チャイルドロック機能:すべての操作を一時的に無効化できる
  • 入力切替の色分け:誤って入力切替ボタンを押して「映らない」と混乱するトラブルを減らす工夫

出典:介護職のおはなし「高齢者向け簡単リモコンおすすめ特集」

製品例

こうした工夫を持つ製品として、ボタンを絞ったシンプル設計の汎用リモコンが複数のメーカーから販売されています。

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また、文字ではなくピクトグラム(絵記号)で機能を示す工夫も紹介されています。電源ボタンに電灯のマーク、音量ボタンにスピーカーの絵、チャンネルボタンにテレビの絵と矢印を組み合わせるなど、直感的に伝わる表示にすることで、文字を読むのが難しくなった場合でも操作を続けやすくなるとされています。誤ったボタンを押した際に、光や音で知らせる機能を持つ製品もあります。暮らしを快適にするアイデア集の解説

介護保険の福祉用具レンタルという選択肢もある

簡易リモコンなどの生活支援機器は、介護保険を利用した福祉用具のレンタル・販売の対象になる場合があります。福祉用具専門相談員に相談することで、本人の状態や住環境に合った製品を提案してもらえるとされています。購入前に、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してみるのも一つの方法です。株式会社ヤマシタの解説

簡易リモコンの具体的な製品例としては、大型ボタン・こぶしでも押せる設計・複数箇所からの赤外線発信に対応した製品などが、介護用品メーカーから発売されています。製品の選び方の基準は、以下の記事で詳しく比較しています。

なお、リモコン操作が難しくなると、テレビへの関心自体が薄れてしまうこともあるとされています。「操作できないから見なくなる」という悪循環に注意が必要です。

それでも難しい場合の代替手段(スマートリモコン)

ボタンの工夫や簡易リモコンでも操作が難しい場合、選択肢の一つになるのが「スマートリモコン」です。スマートフォンやスマートスピーカーから、家族が離れた場所でテレビやエアコンなどを遠隔操作できる家電です。

本人がリモコンを操作すること自体を目指すのではなく、家族側が「テレビの電源を入れておく」「暖房を入れておく」といった形でサポートする、という考え方です。実際に、認知症介護に関する個人ブログでも、簡易リモコンへの変更がうまくいかなかったケースで、スマートリモコンによる家族側からのサポートに切り替えたという報告があります。40歳からの遠距離介護のブログ記事

スマートリモコンの具体的な選び方・設定方法については、別記事で詳しく紹介しています。

まとめ

リモコン操作が難しくなる背景には、失行だけでなく、記憶力・判断力の低下や視力・聴力の低下など複数の要因が関わっているとされています。

まずはボタンを限定する、簡易リモコンに変える、貼り紙をするといった工夫を試し、それでも難しい場合はスマートリモコンによる家族側からのサポートも選択肢になります。

本人の状態に応じた対応が必要なため、気になる変化があれば、かかりつけ医や地域包括支援センターにも相談してみてください。

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